【解説】馬場状態が与えるレースへの影響や道悪巧者・道悪の鬼血統について

競馬の基本知識

馬場状態をチェック

 競馬場のコースは天候によって馬場の含水量の増減があり、走路の状態が変化することでレースにも影響を及ぼします。

 “道悪巧者”の伏兵が飛び込んできて思わぬ高配当を呼び込むこともあるため、競馬予想において馬場状態は重要なファクターと言えます。

 芝・ダートともに良(りょう)・稍重(ややおも)・重(おも)・不良(ふりょう)の4段階で表示されます。

 降水量によっては、同じ日でも良馬場から稍重、重と変化して不良馬場になることもあります。今回は各馬場状態や“道悪巧者”について解説していきます。

良(りょう)

 晴天で馬場が乾いている状態。芝コースでは速い時計が出やすく、乾いて速い時計の出る馬場をパンパンの良馬場と言います。一方でダートではパサパサになって走りにくく、パワーを要するため時計がかかる。

稍重(ややおも)

 少量の雨が降ったり、降った雨が乾いてきた馬場状態。芝はこの程度であれば時計には、さほど影響を与えることはない。ダートでは、ほどよくしまって走りやすくなるため、走破時計は速くなります。

重(おも)

 芝は雨水を含んでぬかるみ、走ると蹄の跡がはっきりとつく馬場状態でレース中は大きな泥の固まりが跳ね上がり時計は遅くなる。この状態を馬場が悪化する、道悪(みちわる)と言います。ダートは水分をたっぷり含み黒く見えるが、乾いている時よりも格段に走りやすい。ダートでは多くのレコードタイムが出るのが重馬場です。

不良(ふりょう)

 かなりの降水量があり、走路のあちこちで水溜まりができるような馬場状態。走れば水しぶきが吹きあがり、滑りやすく怖がって走る気を失う馬もいます。著しく時計が掛かり、スピードが身上の馬にとっては不利。ダートも泥田のような状態になると、さすがに走りにくい。

馬場悪化は“道悪巧者”の出番

 重馬場実績は、重馬場・不良馬場の状態でのレース成績。レース当日の馬場状態が重・不良になった場合は重視すべきデータになります。

 脚抜きがいいとは、稍重~重の状態のことで水を含んだダートの砂がしまって走りやすくなります。芝が得意な馬でも、脚抜きがいいダートならこなせる可能性も高くなります。

 “ノメる”とは重馬場や不良馬場のようにぬかるんだ馬場状態で、地面をかき込んだり蹴ったりした時にズルっと滑ってしまうこと。ノメって滑るような馬場状態で走ると、馬が脚元を気にしてレースに集中できずに、“下を気にする”状態になり、本来の能力を発揮できません。

道悪巧者は、重馬場や不良馬場を苦にしない馬で、一般的には小さくお椀を伏せたような蹄の馬は、道悪が上手いとされます。また、ノメっても怯まない精神力がなければ道悪をこなすことはできません。

 さらに芝コースでスピードを競うレースでは分が悪いが、馬場が悪化することで浮上してくる馬もいます。典型的な道悪巧者のことを道悪の鬼と言い、水かきが付いているとも言われることもあります。

“道悪の鬼”血統

 道悪得意といば、かつてはエルコンドルパサーメイショウサムソンダイワメジャーが代表的されていましたが、過去5年の種牡馬別の芝コースの道悪実績で見るとディープインパクト産駒がトップ。ディープインパクト産駒は、良馬場・不良馬場ともにトップクラスの成績を誇る水陸両用と評されることも。

 まだ出走回数が少ないため十分ではありませんが、“道悪の鬼”として近年の注目種牡馬は、キタサンブラック産駒、ドリームジャーニー産駒オルフェーヴル産駒は、優秀な成績を収めています。

 さらにディープインパクト産駒と同じく良馬場・道悪でも成績に変わりがないゴールドシップ産駒・ドゥラメンテ産駒にも注目です。

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道悪の芝コース・種牡馬別成績 [過去5年]

1位/2位/3位

順位種牡馬着度数勝率連対率複勝率平均着平均人気
1ディープインパクト72-52-53-41012.0%21.4%30.4%6.6着6.0人
2ロードカナロア35-34-24-3168.6%16.9%22.7%8.3着6.7人
3ハーツクライ29-25-33-2927.7%14.2%23.0%7.1着6.6人
4キズナ27-15-22-18011.1%17.2%26.2%7.1着6.5人
5オルフェーヴル26-35-20-1889.7%22.7%30.1%7.2着6.7人
6ダイワメジャー25-24-26-2128.7%17.1%26.1%7.5着7.3人
7ハービンジャー25-17-28-2378.1%13.7%22.8%7.5着6.8人
8ルーラーシップ24-29-38-2596.9%15.1%26.0%6.9着6.2人
9キングカメハメハ20-20-14-13910.4%20.7%28.0%6.9着7.5人
10スクリーンヒーロー18-12-15-12210.8%18.0%26.9%7.1着6.7人
11エピファネイア15-22-19-2125.6%13.8%20.9%7.5着8.2人
12エイシンフラッシュ15-12-09-1418.5%15.3%20.3%7.5着6.2人
13ドゥラメンテ14-19-11-1039.5%22.4%29.9%6.7着6.2人
14ゴールドシップ12-18-19-1306.7%16.8%27.4%6.7着6.8人
15モーリス11-15-13-1037.7%18.3%27.5%7.4着6.1人
16ジャスタウェイ11-13-11-1466.1%13.3%19.3%7.9着7.4人
17ヴィクトワールピサ11-07-17-1476.0%9.9%19.2%8.0着8.2人
18ディープブリランテ10-06-07-879.1%14.5%20.9%7.8着7.9人
19キタサンブラック10-03-06-3817.5%22.8%33.3%6.9着5.7人
20ドリームジャーニー09-09-08-3115.8%31.6%45.6%5.1着6.8人
過去5年の道悪(芝)種牡馬別成績

馬場状態の目安となる含水量とクッション値

 JRAでは馬場状態について、良・稍重・重・不良の4段階のほかに含水率とクッション値を公式HP内で公表しています。

 コースの湿り具合を表す【含水率】は2018年7月より公表されており、馬場から採取した試料(芝コースは路盤砂、ダートはクッション砂)に含まれる水分割合のことです。含水率20%なら、100gの試料に20gの水分が含まれていることを示します。数値が大きくなるほど、コースが湿っている指標になります。

JRA公式HPで公開される最新の馬場状態はこちらから確認できます。

芝とダートの含水率の違い

 芝コースの路盤に使用される砂は、芝の生育に必要な肥料成分は気候風土によって変わってくるため各競馬場によって異なります。

 路盤のクッション性を維持するために、土壌改良材も競馬場ごとの最良のものが選定されるため、芝コースの含水率の数値は競馬場によって違いが出てくることも覚えておきましょう。一方でダートコースの表層を覆うクッション砂の性状は、どの競馬場でもほとんど変わりません。

 馬場状態区分による含水率の目安は、馬場全体の状態から総合的に判断されます。各競馬場のおおよその含水率と馬場状態の目安は以下のとおり。

競馬場稍重不良
札幌0~1514~1817~2120~
函館0~1514~1817~2120~
福島0~1513~1715~1917~
新潟0~1513~1715~1917~
中山0~1311~1514~1817~
東京0~1917~2118~2320~
中京0~1412~1614~1716~
京都0~1314~1813~1614~
阪神0~1214~1812~1413~
小倉0~108~1210~1412~
芝コースの馬場状態と含水率の関係(%)

 例)札幌競馬場で含水率15%未満=良、14~18%=稍重、17~21%=重、20%以上=重と判断する目安となります。

競馬場稍重不良
全場~97~1311~1614~
ダートコースの馬場状態と含水率の関係(%)

馬場の反発を示す「クッション値」

 クッション値は、2020年9月より公表されている競走馬が走る時に、馬場に着地した際の反発力を数値化したもの。含水率が路盤の芝の根より下の水分状態であるのに対して、クッション値は芝の表面における水分状態や芝の生育状態に左右されます。

 測定にはゴルフ場、ラグビー場、サッカー場でも使用される簡易型測定器のクレッグハンマー(正式名称:クレッグインパクトテスター)を使用。※2.25kgの重りを45cmの高さから自由落下させて馬場に衝突した際の衝撃加速度を測定。

 1箇所につき4回連続で重りを落下させ、その4回目の数値をその箇所の測定値とします。なお、この測定方法はクレッグハンマーを使用する際の一般的な方法で、クッション値は馬場表層の含水率と密接な関係があり、含水率が高くなるほどクッション値は低くなる傾向があります。

クッション値の見方

 芝コースのクッション値は7~12で表され、数値が大きいほど馬場が硬く、小さいほど柔らかくなります。標準値は8~10で一般的にサッカー場は9、野球場は10に相当。海外(イギリス・フランス・オーストラリア・香港・アメリカ)の主要競馬場での芝コースの測定では、概ね7~10の範囲内。

クッション値クッション性水分状態
12以上硬め乾燥気味
10から12やや硬めやや乾燥気味
8から10標準標準
7から8やや軟らかめやや湿潤気味
7以下軟らかめ湿潤気味
芝馬場のクッション値と馬場表層の状態との関係性(参考)

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